脳をエンジニアリングする

脳という神経系(およびホルモン内分泌系)を理解するためには、生物的なこと、神経のこと、ホルモンのことを知らなければならないのはもちろんのことだが、その研究戦略の有力なやりかたのひとつとして、エンジニアリング、というのがある。

エンジニアリングとは、工学、つまり、物を作る、そのために、素材から組み立て、実際にある目的のために働くようにする、そのプロセスの研究である。例えば、お菓子を作る工場のことを考えてみよう。お菓子のための素材、材料、あめなら、あめを構成する成分を集める。 それをあめの形(球形)にする。日本ならば、その上から、ナイロンなどで包む。それには包装がされている。 そしてそれらをかき集める、そして一定の量をまとめて袋詰め(この袋にも包装がされている)にして閉じる、これで完成、というわけだ。

脳の情報処理過程についても、上と同様にエンジニアリング的にひとつひとつの過程の連続として考える必要がある。

脳は、外界から、センサー(例えば眼ならば、光細胞)を通じて、情報を取り入れ、神経系を伝達するインパルスという神経頻度という情報に変換し、それを、神経同士を通じてやり取り(通信)している。 脳内部は神経の塊であり、それらがある一定の様式を通じて、情報処理をする。 視覚でいえば、カメラのように、最初はフィルタのように光の性質を変換させるが、ただのフィルタではなく、情報の抽出(色マップの形成)、集約(要らない情報を捨てて、必要な情報を抽出)、統合(情報と情報の輪集合、制集合)を作る、などの知的情報処理がここですでに行われる。

そして、実際、脳の中の世界 (脳内j表現)が 形成される。これを使って、視覚的注意、記憶、イメージ、連想などの働きがされる。 そして、それらの「内部表現」を使って、体を動かしたり、眼を動かしたり、という運動制御が
出力として行われる。これが、脳のエンジニアリングの基本である(今回はホルモン系を省略)。

人間の心理、つなり、気持ちとかこころは、このようなプロセスを経て、いわゆる意識として出てくる。 21世紀になり、ついに意識にまで研究のメスが入ろうとしている。 その際、脳活動を、そのプロセスとして同時に考えることは、以上のような経緯から、当然のことである。