時間と脳の「時計」

時間と認知は非常に密接な結びつきがある。ところが、時間を直接コードする脳の部位はない、と言われる。 視覚や聴覚、体性感覚などのいわゆる五感は、それらを司る部位はある、というのに。

では、脳にとって、時間とはいったい何だろうか? 脳は、いったいどういったメカニズム、どういったシステム、どういったプロセスを経て、時間という認知をつくりだしているだろうか。

そもそも、時間とは何か。 物理学と脳科学で異なるのは、物理学では、時間の対称性を過程しているのにたいして、脳科学では、時間は現在、過去、未来で非対称である。

ここでは、特に、過去に関する記憶や、現在に 関するいわゆる心理的現在、という概念と同時に論じてみたい (未来については、未来に論じるww)。まずは、根本問題としての事実を確認してみよう。 

1. 脳は神経が1400億個固まってできている巨大な情報集積体である。 
1. その電気信号は、活動電位という数ミリ秒のイベントが基礎になっている。
1. しかしながら、それがある一定の数集まると、流速(カレント)を生じる 
   (Local Field Potential)

1. それは、かたまりとなり、同期信号としての役割を果たす。それはおおよそ10秒に
一回(0.1Hz)から   1秒に100回(100Hz)の範囲で生じる。 
ダイナミックレンジは4ケタである。

1. それに栄養と酸素を補給する血流は、0.1〜1Hzのオーダーである。
1. 異なる感覚の間で、情報の統合が起こっている。 これは、10〜100Hzの
レンジである。

1. 感覚系と運動系の間で、情報のすり合わせが起こっている。これも10〜100Hz
のレンジである。

1. 一方、作動記憶は、約0.2〜0.3秒周期(3〜5Hz)の信号がその基礎になって
いるらしい。

これらを総合して考えると、脳の中には、異なる時間、異なる時計が混在して、
それらが何らかの方法で時間合わせ、時計合わせをやっているらしい。
例えば、視覚系と聴覚系で時計が異なるであろう。視覚系と体性感覚系においても
同様である。 こうした仮説の信憑性を確かめるためには、

まずは、視覚系でどのように時計を定義するか、そして、聴覚系でどのように時計を定義するか、ここから始めなければいけないであろう。

(つづく)