心理行動計測と脳計測の比較

とある教授から、心理行動計測は、脳計測よりずっと精度が
高く正確でモデルも作れる。なのに、なぜ脳計測を行うのか、
という質問を受けた。

その答えは、脳計測を行う人々が、心理計測を知らないために、
脳の反応に重きを置き、それが何か非常に貴重なものだと勘違いし、
さらに一般の人々も、脳の反応ということで、それだけで恐れを
なしたり、必要以上に重きを置くことにその理由がある。

しかし、そうした現象的な記述のほかに、根本的問題は、
心理計測は脳のことを考えず、心理計測の結果だけで満足して
そのバイオロジカルプロセスは気にしないのに対し、
脳計測は、脳のことだけを重視し、それがどのように意識や
行動、認知作用として現れるのかを気にしない、という
コミュニケーションのギャップにその原因がある。

つまり、脳神経系が作り出す現象を完全に理解するためには、
心理計測と脳計測の両方の情報が必要であり、それらを同時に
計測し、それらの情報を同時に考慮してモデルをつくらなければ
脳科学を行っている意味がない。
25年前にD.Marrは、それら両者を考えた理論的枠組みを作った
のだが、神経レベル、認知・心理レベルが真にがっぷりよつに
なった研究というのは、実はいまだにきちんとした形では
存在しないことが明らかになった。

というのは、くだんの教授は、その分野でも第一人者である
ひとであるからだ。更なる議論を重ねる必要がある。