量子力学・場の理論の簡単な説明

1900〜1950年までの、理論物理学、とりわけ量子力学場の理論を概観してみた。


量子論の骨格は以下の2点である。


1. 電子は粒子的(個数で数えられる)である。 

プランクが示唆し、アインシュタインが理論化した、光電効果

2. 電子、光子は波である (波長をもつ)

マクスウェルの理論より。 光は電磁波である (19世紀物理学最大の成果) 



この二つを両立させるため、プランク定数を使って電子を数え上げる

とともに、電子を波として説明する(ド・ブロイ波)式が必要である。

それが、波動方程式と言われる式であり、エルヴィン・シュレディンガー

古典論を応用、量子に適用して開発した。

波には伝播するイメージがある通り、シュレディンガー方程式は、

量子の「状態」 (場を含む全体のふるまい) そのものが時間推移をする

という描像だが、


一方、その「状態」をベクトル表示し、固有方程式として、ベクトル行列式表示

したとき、固有値が状態と見なせて、シュレディンガー方程式は、時間推移のない

行列式になる。 これによって、状態遷移を行列の一次式に変換できる。

これが、ハイゼベルグのやり方だ。

ハイゼンベルグは、これを使い、行列計算の順序を変えた場合、

例えば波を表す行列A,Bを仮定した場合、A・BとB・Aが等しくない、

すなわちA・B−B・A≠0でない場合を示した。 この場合、

A・B−B・A=n・プランク定数 とすれば、波と粒子の個数が方程式でつながる。

更に、ここから、波を個数として数える場合、波の大きさ(幅、波長)に

プランク定数が何個はいるか、という不確定性が発生する (不確定性原理)。

ハイゼンベルグのやりかたは、行列計算A・B−B・A=[A,B] (ポアソン括弧)

をつかえば、状態(の時間変化)を、運動エネルギーの一般表現

[ハミルトンが 開発した一般運動量(ラグランジェアン)を使った表現なので

ハミルトニアン演算子)と 呼ばれる] と分離して表現できる。

つまり、電子を含む場全体の状態を、 ニュートンが行ったような運動方程式

として表現できる。 これは、シュレディンガーの波の推移の方程式にくらべ、

より一般的な、状態(粒子=波をふくむ場)の表現である。 


注意するべきは、この量子(電子)の運動方程式は、波でかつ数え上げられる状態

(粒子)の両方の表現には、波が連続体であり、量子が非連続であるため、

そこに不確定性が生じる。 非連続な数で数えている限り、無限小の間隔に無限大の

個数が入る、ということだ。 これを扱うために、超関数の考え方が必要になり、

実際の計算は確率的にならざるを得ない。これに納得できないアインシュタインは、

量子論を認められなかったし、これを理解できないシュレディンガーは、ネコという

矛盾を生みだした。 そして、彼らの懸念は、その後の量子場の理論の議論に

大いに関係するのである。 


==(では、相対論はどうか?)

ここで、ひとつ考慮しなければならないことがあるのに、気がついたのが

我らが天才ディラックである。 すなわち、電磁波は光を含むため、光を説明することも

必要である。ゆえに、光から、電磁波を説明した、特殊相対論が今までの議論に当てはまる

ローレンツ条件を満たす)ことが必要十分である。すなわち、ハイゼンベルグの方程式に、

ローレンツ変換を適用できなければならない。 アインシュタインが1910年までに

確立した、特殊相対論では、空間と時間は、光に対して相対的であり、それは

ローレンツ変換によって、ローレンツ共件を満たすことによって保障されることが

既に、1920年代には、常識であった。

よって、ハイゼンベルグまたはシュレディンガー波動方程式ローレンツ不変に

しなければならない。この要請から、ディラックの方程式が導き出された。 

電子が、核子の周囲を旋回運動するため、電子の運動はスピン運動量保存満たし、これ

を説明する条件を満たさなければならなかった。

それを、上記の論理により、ゴードン・クラインの方程式を利用して、

場として説明しようと試みた(解いた方程式を 現実に照らし合わせて解釈した)

。方程式を解き終わったとき、ディラック自身も驚いたことに、

、電子が生まれる項と、電子が消滅する項が、同時に現れてきた。

最初、ディラックは解釈に苦しみ、 電子が発生し消滅する、海のようなものを

仮定したが、それは、陽電子の発見により、修正された。
 
上記の光電効果の発見から、ゆえに、電子が生まれることと、電子が消滅すること、

そのイベントに光が関与するプロセスが必要となる。

これが、量子場の理論であり、電子の発生、消滅、光、そしてそれが起こる

場のすべての要素を一気に説明しなければならない。

その過程には、不確定性原理が適用されなければならず、

そこに無限大が発生する。

これを消滅させるため、繰りこみ理論が必要となり、

そのために、繰りこみを説明に入れた、量子場の理論体系が必要となる。

これが、量子論の基本的骨格である。 これは、朝永、シュウィンガーによって

行列式的(ハイゼンベルグ的)に定式化され、また独立に運動量変化(ラグランジ

方程式)を使った量子経路を仮定し、それを積分する、

その方式をグラフ化することによって、ファインマンによって実現された。

==

これが、量子場の理論の骨格である。

もちろん、ここには、中性子・陽子のベータ崩壊理論、弱い力の理論、

核子を説明する強い力の理論 (湯川理論)、のはなしは含まれていない。

これらは、1950年以降、この量子電磁気学をベースにして説明されることになる。

中間子、陽子、中性子、それらの研究から、新しい粒子、素粒子が数多く生まれることになる。