脳と生理と心理の関係

20世紀(1900年代)には、脳は生理的なもの、心理は脳と関係が
あるだろうが、心理は生理では解決できないもの、という考えが
主流であった。例えば、臨床心理学では、ストレスを生理的ストレスと
心理的ストレスに区別し、生理的ストレスでは脳が関係するが、
心理的なストレスでは脳に現れない、どこから来るかわからないが
本人が報告するわけのわからないもの、という定義であった。

ところが、そのわけのわからない心理の少なくとも一部分が
脳と関係する、ということがだんだんとわかってきた。
とりわけ、fMRIEEGなどによる脳機能計測によって、少なくとも
心理の構成要素である、認知や感情が、脳のある部分、もしくは
脳の部分の間のつながりによるものであることが少しずつであるが
ありらかになりつつある。

そうすると、前世紀の学説のように、脳=生理、それ以外を心理、
とする分類は、根本的に間違っている、と言える。

脳と生理と心理を同列に扱う、ただし心理も未だにうまく分類できない
部分(例えば気分など)も存在する。それをどのように定義し、
どのように扱うか、そこに学問としてこのやり方が成り立つかどうか、
の成否がかかってくる。

一つの考え方が、脳神経系とからだを支配する自律神経系の
関係を考えることにある。脳神経系を支配する活動のかなりの部分が、
その目的を、いわゆる意識を成立させることを目的としている。
しかしながら、自律神経はからだの働きを意識とは独立に(無意識に)
支配するのがその目的である。

しかしながら、自律神経系の働きが狂ってくると、最終的には
脳神経系に影響し、その働きを狂わせることがいろいろなデータから
示唆されている。これが、気分などの心理に影響することが
だんだんとわかってきた。

自律神経活動と脳神経活動の関係を明らかにすることが、生理と心理
の関係を解くカギになりそうである。