時間と神経系の謎(2)

以前にも書いたが、神経細胞の情報伝達には、一個の細胞ならば、
入力されてから、出力されるまでに2,3msかかる。

ところで、僕の専門の一つである視覚系でいえば、網膜は3層に
なっているので、視細胞に光情報が入って網膜の出力である
神経節細胞が出力を出すのに、10ms程度、更にそこから、
LGNという中継核を通って、皮質に到達するのに、人間と
ほぼ同等の解剖構造をもつサルでは、30ms程度かかる。

つまり、複雑な並列処理では、単純に加算されるならば、網膜
出力までに6ms、皮質までなら、10msしかかからないはず
なのに、約3倍の時間がかかっている。

これは、並列処理、その統合、そして、ここでは詳細には論じないが
フィードバックによる時間の統合時のなんらかの遅延が起こって
いる、と考えざるを得ない。 恐らく統合と、その同期をとるのに
時間がかかるのだろう。 


 次に脳内では、どうか。 神経線維は、V1では6層、V2以降も
6層構造である。これらは、第四層に視床から入力し、介在細胞を
経て、第2層へ行くものと、第5,6層へ行き、そこから別の視床
向かう信号が形成される。

V2などの高次皮質へは、第2層から、出力される。
V1とV2の時間差はほとんどないが、V3,V4へは20mほど、
更にV5、V6、V7へは更に数十ミリ秒遅延される。

頭頂葉、そして側頭葉に信号が到着するのは、約200ms、
そしてそれらが上と横から前頭葉へ到着するのは約300ms後
である。

(つづく)