自律神経と脳

自律神経系は、呼吸、循環、消化、代謝、体温調節、排泄、生殖などの不随意な機能の制御をおこない、生体の内部環境を維持調節する恒常性(ホメオスタシス)を維持する役割をもっている。自律神経には、機能的にお互いに拮抗する働きを持つ交感神経(Sympathetic nerve)と副交感神経(Parasympathetic nerve)がある。各臓器は、この2つの神経の2重支配によって相反的に調節される。自律神経の節前繊維終末から放出される神経伝達物質アセチルコリンであるが、交感神経の節後終末ではノルアドレナリンが、副交感神経の終末からはアセチルコリンが放出される。

神経節での節後ニューロンの受容体はニコチン受容体であるが、副交感神経の終末受容体には、ムスカリン受容体もある。自律神経に関連する中枢には、脊髄、脳幹、視床下部の3つがある。脊髄は内臓と皮膚をめぐる反射を司る。脳幹では、延髄、橋に血圧と呼吸中枢、嚥下、唾液中枢、対光反射中枢がある。視床下部は、自律神経系の最高中枢であり、睡眠中枢、体温調節、摂食中枢、性中枢などがあり、更に嗅脳や大脳辺縁系前頭葉などからの影響を受ける。

古典的には、自律神経反応は、心拍変動(交感副交感2重支配)、呼吸、血圧、瞳孔、発汗を計測することによって調べられてきた。心拍は、心電図(EKG)または心磁図(MEG)によってその神経電気活動を調べる方法、fMRIによる計測方法、そして赤外線を利用した脈波計測法(Pulse Oxymetry)などがある。心拍、呼吸、血圧は、体内のガス交換と血流制御の循環器系制御システムの一環であり、それらの間で複雑な相互作用がある。瞳孔は、交感神経活動により、瞳孔括約筋が活性化し拡大する一方、副交感神経活動による毛様体筋が活性化し縮小する、という二重拮抗支配を受ける。これを計測するには、赤外線瞳孔計を使い、瞳孔と硝子体の境界を画像処理で検出するのが一般的である。

発汗は、体温調節がその目的に一つで、体温がある閾値を超えると、交感神経が刺激されて全身に分布する汗腺(エクリン腺)から発汗する。これには、温熱性発汗と精神性発汗がある。精神性発汗は 
交感神経のみからの支配を受け、副交感神経の支配は受けない。
発汗計測は、筋電などと同様の皮膚表面電極を使用することによって、皮膚抵抗値として計測できる。